圧倒的に成長したい、そんな学生はベンチャーに行くべきなのか。今一度考えてほしい「成長」の定義について話してみよう。
数年前くらいからか、就活の舞台で「大手にいくべきかベンチャーにいくべきか」という議論が流行りだした。
ベンチャーに行きたいという学生や、ベンチャーを進める社会人、はたまた学生をなんとか採用したいベンチャー企業はこぞって”圧倒的な成長”を口にする。
「圧倒的な成長がしたい→ベンチャーに行く」という図式はたいがいは間違っていないことの方が多いと思うが、それだけでは少し思慮深さが足りない。
それは時に成長したいと思って入った企業で、「あれ、なんか違うな」という就活のミスマッチを生むことになる。
実のことを言うと僕自身、新卒採用で企業と学生のミスマッチの典型的な例を経験した人間だ。
だからこそ、今の大学生にそんな不幸な時間を過ごすべきではないと伝えたいと思い、今回この記事を書くに至った。
では話を戻すと、なぜそのようなミスマッチが生まれてしまうのだろうか。
それは、どんなスキルについて圧倒的(レベル感なのか速度なのか)な成長がしたいのかを十分に思い描けていないことに起因する。
ここで、ひとまず成長するとはどういうことかを定義し直した方がいい。
成長するとは大きく2つの意味があって、1つは今まで出来なかったことが出来るようになることと、もう1つは今まで出来ていたことを更に発展させることだ。
言い換えると、前者は付け加えるイメージで後者は引き伸ばすイメージだろう。
ちょっと変わった例をあげるなら、大学の時にお酒の席でマイペースに飲んでた人が、大手企業に入ってからグラスの中身が減っていたらお酌する、先輩方にビールをついで回るといったことが出来るようになることも、成長と言える。
話を戻すが、そうなると現在手持ちの能力で仕事が全部できますなんていうスーパー大学生は滅多にいないから、どの会社に行こうが成長はできるわけだ。
じゃあどこでもいいんだとはならず、その成長の中でも”圧倒的”な成長を学生は所望する。
では、圧倒的な成長とは何を指すのか。
大抵はスキルの幅(もしくは習熟度)と速度の2つに集約されるだろう。
学生の時は僕も周りの人達もそうだった。
正直速度に関しては、社会人になってからの数年間のことを言っているのならベンチャーでいいんじゃないの?と8割方思うが、業界柄というものもある。
例えばコンサル業界ではキャッチアップの速さというものが重視されているため、他業界と比べれば格段に成長速度は速いだろう。また、外資系金融といったそもそも優秀な人材が集まる業界も、成長速度はスタンダードで速い。
ちなみにコンサルでは三か月で博士号を取るキャッチアップを繰り返して一流になれるだろうと某著名コンサルタント達の対談の中で言われていた。
あとはどんな成長をしたいかの兼ね合いにもよるだろう。
経営者になりたいという理想がある場合、下手にベンチャーに行ってよりかはリクルートや10年で一人前の経営者を育てるという方針の商社に行った方が早いかもしれない。
そして今からが本題なのだが、
「あなたが成長したいと言っているのはどのスキルのことですか」という質問に答えられるだろうか。
思うに、成長できる企業がいいと言っている学生の多くは、汎用性の高い能力に重きを置いていることが多い。
これは大企業と言えどももはや安定ではないと言われだしていたり、転職が当たり前になりつつあったり、働き方が個人重視へとシフトしつつある現況に理由があるだろう。
だが、汎用性の高い能力を身につけることだけが成長ではない。
彼らの頭の中にうっすらとある成長の理想像について、4つのスキルがあると思われるので以下に言語化を試みようと思う。
お金を生み出す力
ビジネスを作り上げる力といった方がしっくりくる人もいるかもしれない。新規事業にガンガン取り組んでいるベンチャーやリクルートなどのイメージが多い。
少し時間がかかってもいいならば五大商社等もはいってくるだろう。
ちなみに、経営者になりたいからコンサル業界に行きたいという志望動機はよくあるが、僕としてはそれは芯を得ていないと考えている。
コンサルは常に課題を解決する思考であるから、ビジネスが出来上がってからどう維持・発展させていくかの場面で力を発揮するが、スタートのところではビジネスの”嗅覚”や新規立ち上げのセオリー、そしてなんといっても発想力といったものが必要になってくるので、正直コンサルでは培えないものの方が多い気がする。
マネジメント力
同じ枠組みとしてリーダーシップがあげられる。大手企業に行けば早くて中間管理職は40歳前後、それから自分で旗を振ってプロジェクトを仕切っていくとなるともう少し時間がかかる。自分が前に立って仕事を進めていきたいという意欲のある人が、早い段階で裁量権の大きい仕事や立場にアサインされるベンチャーに魅力を感じるのは理にかなっていると言える。
名だたる企業で思い当たるところをあげるとするならばサイバーエージェントなどになってくるだろう。
オールマイティ力
とにかく何でもこなせる、業務の幅が広いこともまた、成長の1つとして挙げられる。
これを経験出来るのはなんといってもスタートアップで制度の整っていない企業だろう。
ただし、自分がどのポイントでうまく機能するかに徹底的にフォーカスすることでよりお金を生み出す風潮にある現代ビジネス界で、なんでもかんでも出来るようになるというのはいささか考え物かもしれないという点は考慮したいところだ。
パフォーマンス力
処理能力の速さであったり仕事を押し進める力。
とくにコンサル業界や商社はそうだと感じる。
自分のことで申し訳ないが、金融機関からコンサル業界に転職してみたら、全然違う。
けっこう無茶ぶりに近いぞこれみたいなのがぼんぼん降ってくる。
そこをどう上手く効率的に裁いていくかと、力でねじ伏せろ、キャバーオーバーとか言う前にもっとパフォーマンスあげろという圧力が半端じゃない。
この成長は求められる仕事の質と量に比例すると考えられるので、どんな業界のどんな職種が量・質ともに最高が求められるかを見ていけばよいだろう。
まとめ
この記事の中では出来るだけ言葉を最小単位で定義しなおすことに努めたつもりだ。
繰り返しになるが、僕は出来るだけ今の学生たちに不幸な就職をしてほしくないと強く思っている。
だから、まだまだぼんやりしている自分の理想や想いをこの記事を参考に更に明確化し、自分の夢を本当に叶えることが出来る企業にいく手助けとなれば嬉しい。
もし時間が許すなら、過去記事も併せて読んでみてほしい。