「僕たちは世界を変えることができない」を読んでみてほしい。
この本を始めて目にしたのは大学1年の時だっただろうか。
結構本屋に行くのが好きで、大学の生協にもふらーっと足を運ぶことが度々あった。
おすすめか何かのコーナーにこの本は平積みにされていた。
なんだろうとは思ったものの、初見、表紙で嫌った。
うえーいみたいな4人の若者と、それっぽい仰々しいタイトル。
しょうもないギャル男の逆転劇みたいな話なんだろ、となぜかその時は感じた。
このときはまだ、自分がこの本のことを一番好きになるなんて思ってもみなかった。
僕の好きな本はいくつかのジャンルに分かれている。
小説、特にヒューマン系は高校まで読んでいて、大学からは岩波文庫とビジネス書といった感じだろうか。ノンフィクションは読んだことがない。
例を挙げると、高校生までに読んだ中でお気に入りは森絵都の「DIVE!」と恩田陸の「夜のピクニック」。
本棚においていつでも読み返したいのは岩波文庫の「大学・中庸」と「菜根譚」。
名作だったなと思い出すのが「アルジャーノンに花束」をとアガサクリスティーの「そして誰もいなくなった」。
大学からのお気に入りは三枝匡の「戦略プロフェッショナル(ストーリー仕立てだけど一応ビジネス書として)」と大前研一の「企業参謀」とか。
どちらかというとアカデミックさや実践度を重視した本を当時は選んでいたように思う。
というか、「小説読んでも生産性なくない?」といってたようなタイプだった。
そんな感じだったけど、大學のラスト、確かパリに行く前。
なぜだかはわからない。
いつもみたいに新宿の紀伊国屋をぶらぶらしていて、なぜか吸い込まれるように手に取った。
その場でなんとなく立ち読みしたら、一瞬で引き込まれたのを今でも覚えている。
即買いして一気に読み上げた。
ストーリーは、 とある都内の大学2年生が偶然郵便局で目に付いたパンフレットがきっかけで、カンボジアに150万で学校を建てる、というもの。
著者の目線で、日記になぞったような形式をとって話は進んでいく。
150万という大金を集めるために仲間を集い、頭をひねりぶつかり合いながら活動する。
最初は勢いで始めてみたけど、次第に”カンボジアに学校を建てる”ということに対して真剣にむきあうようになる。
その中で、自分の小ささに不甲斐ない思いをしたり、今までになかった日常に対してエキサイトしたり、知らなかった世界に衝撃をうけたり、悲しい現実に傷ついたり。
それらすべてに対する著者の想いが、等身大で、赤裸々に語られている。
最終的には学校を建てることができ、開校式のスピーチで幕を閉じる。
正直言うと、「自分と同じ大学生がカンボジアに学校を建てたんだ!すごい!」という慈善活動にめちゃくちゃ感銘を受けたからっていう理由で、この本を好きになったわけじゃない。
多分、著者の葉田甲太さんって”人”に惚れたんですよ。
読んでみたらわかると思うんだけど、葉田さんっておそらく思考がけっこうネガティブなんですよ。(これは勝手に僕がそう受け取っているだけかもしれないけど)
そこが同じようなネガティブな自分がすごく共感できた部分で。
「その気持ちわかるわあ~」みたいな。笑
そして、なによりも物事に真っすぐ向き合っているところ。
苦しみながら前に進もうとしているところ。
なにかモヤモヤしていた日常から、全力で生きているその姿が文章から伝わってきて惹かれました。
現に本人も「学校を建てたあの日々は僕にとって青春でした。」とコメントしているわけで。
この本は本当に今まで読んだ本の中で一番のお気に入りだ。
立ち止まりそうになった時、迷った時、いつも読み返している。
そして、何回読んでも思う。これはすごい人の物語なんかじゃないと。
自分たちと同じ一人の人間が、ただ一歩を踏み出したかどうかの違い。
そんな勇気を与えてくれる一冊、最後に本書のエピローグから葉田さんの言葉を抜粋したいと思う。
ー 結局僕がこの本で伝えたいことなんて、実はほとんどないのかもしれない。
ただひとつあるとすれば、「人の笑顔はものすごくパワーをくれることがある」ってこと。
そして、その瞬間が僕はめちゃめちゃ好きだってこと。
それだけなんだと思う。ー
僕たちは世界を変えることができない。But, we wanna build a school in Cambodia. (小学館文庫)
- 作者: 葉田甲太
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/07/06
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