カードローンとはどんな商品か本当にわかっているか?元銀行員が警鐘を鳴らす。
最近ニュースを見ていて気になる記事があった。
昨年から金融庁が銀行のカードローンが良くないと警戒し始め、つい先日都市銀行に立ち入り調査を行ったようだ。
記事の趣旨としては、銀行(ちゃんとしたところ)が運営しているローンだから安心だと思った利用者が、実はちゃんと返せないほどの金額を借りてしまい生活難に陥ってしまっていることを危険視した金融庁が、「銀行さん、審査を甘くしすぎてたり、借りやすくしすぎたりしてないですか?」と規制をかけに入った、というところだ。
どうしてこの記事が気になったのか。
なにを隠そう、僕は元銀行員だからだ。
しかも新卒で営業店に配属され、個人向け融資の窓口に2年間、車からリフォームから住宅から、全部のローンにどっぷりつかり続けながらずっと思っていたことがあった。
カードローンほどひどい商品はない、ということだ。
この感覚は銀行に勤めている人や経営者の人くらいしかもたないんじゃないだろうか。
なぜなら他のローンを知らないから比較出来ずに、カードローンってこんなもんなんだと素直に受け入れてしまうためだ。
特に若い人ほどお金を借りたことがないから、カードローン(もしくはキャッシング)がどんなものかわからずに便利だからと使っている。
僕の友達にも財布の中にお金がない時や、ちょっとした資金が必要になった時にカードローンを使ってほたりっぱなしという人が何人かいるが、会うたびに口を酸っぱくして「返せるんなら今すぐ全額返済しろ」と言っている。
どうしてこれほどまでにカードローンに警鐘を鳴らすのか、順を追って説明していきたいと思う。
カードローンとはどんな商品か
そもそもカードローンとはどういった融資なのかについて話をしよう。
まずはお金を借りる仕組みについて。
カードローンというその名前の通り、キャッシュカードみたいなカードでお金を借りることが出来る。ATMでお金を引き出す(借りる)といった使い方をする。
つまり、一度に50万とかが口座に振り込まれるのではなく、自分が好きなタイミングで好きな金額を借りることが出来る、利便性の高い商品だ。
ただし、無限にお金を引き出せるわけではない。
”貸付限度額”というものが決められていて、「あなたはこの金額まで借りていいけど、それ以上は駄目ですよ」と、いう仕組みになっている。
ちなみに前述に取り上げたニュースでは、「この金額が債務者の返済能力より大きな金額になってないですか?」というところを突っ込んでいる。
そして大抵のカードローンの金利は、この貸付限度額に応じて決まる。
例えば限度額が50万なら金利は14.5%、300万なら9.0%といった具合。
大体のレンジは5%~15%のようだが、5%台は年収が一本乗っている人じゃないと出ないイメージ。つまり普通の人なら高い金利しか出ないっていうことだ。
最後は返済について。
返済方法は基本的には毎月決まった日に口座から引き落とされる、といったもの。この際の返済額は利用金額に応じて変わってくる。
例えば10万借りていたら毎月2,000円だけど、50万かりてたら毎月1万円とか。
この返済に加え、好きな時に好きな金額を返すことが出来る。
例えば口座引き落としは1万だけど、ボーナスが入って余裕があるから5万返すとか。
以上がカードローンの基本的な商品性だ。
どうしてやめとけと言うのか
カードローンがどのような借入か一通り説明したところで、本題に入ろう。
一言でいうと、全然減らないんだよこれ。
金利が高いからというわけではない。
カードローンは車や住宅といった他の個人向けローンに比べて仕組みに決定的な違いがある。
その話をする前に、まずは全てのローンの返済に共通する仕組みについて話しておきたい。これはこの後の話をするうえで関わってくるから、飛ばさずに読んでほしい。
現在、車でも住宅でも、全てのローンの返済方法で主流は『元利均等返済』というものだ。
月々の返済額について、みんなはどのように捉えているだろうか。
よく住宅ローンのお客さんで多かったのが、借りた金額だけを返しているという認識でいることだった。例えば、借りた4,000万円分を返しているイメージ。
「えっ、そうじゃないの?」と頭が混乱しただろうか。
そうだとするなら、利息はいつ銀行に支払っているのだろうか。
そう、実際は”月々の返済額=借りた金額(これを元金と言う)+利息分”なのだ。
で、今の主流は「毎月の返済額はいつも同じ方がお金の計画を立てやすいし良いよね」ということで月々の返済額を一定にしましょうとなっている。
ではここで疑問。
月々は一定だけど、元金と利息分はどうなってるの?という点だ。
実は元金=利息分ではない。
借り始めの頃は返している元金が少なくて、利息分の比率が大きい。
逆に返済が終わりに近づくと、元金の比率が大きくなって利息分は小さくなる。
これが『元利均等返済』だ。
さて、ここまでの話を踏まえたうえで、カードローンとその他ローンの決定的な差について説明しよう。
それは、カードローンはまだ払っていない利息が元本に組み入れられる仕組みになっているということだ。(わかりやすく説明しているから細かい語彙の差は無視してください。)
こいつがあるせいで、「毎月ちゃんと返しているはずなのに全然残高が減らない」っていう事態が起こる。
詳しくは図解じゃないと説明しづらいから、下図を見てほしい。
(仕組みをわかってほしいので、金額もわかりやすくしている。実際こんなことはないことは注意してほしい。)
だから「返せるんだったら一気に返せ」と口を酸っぱくして言っているわけだ。
他のローンはこんなシステムが無いから、ちゃんと毎月返していけばいいんだけど、コードローンは毎月決められている額を払っているだけじゃ返済し終わるまでにめちゃくちゃ時間かかるし、あり得ない利息を取られてしまう。
まとめ
長文になったが、カードローンがどれだけマズい商品かということがわかって頂けただろうか。
お金を借りることが悪いというわけじゃない。
ましてやカードローンを使うことが愚かだと全否定するわけでもない。
なぜなら2年間融資業務に携わった中で、どうしてもお金が必要な時にカードローンしか通らなかったという案件も数多く見てきていて、苦しいことだって痛いほどよくわかるから。
だけど、カードローンが利用者にとって良いものではないということをしっかり理解した上で、とにかく使ったら出来る限り早く返済しないとものすごく損をする、ということだけは本当に伝えておきたかった。
久々にこんな超真面目な記事書いたなあ。